アビ漁(世界的にも例がないこの漁)
冬場、豊浜・斎島周辺の瀬戸内海に飛来するアビ類(シロエリオオハム、オオハム)の群れが好物のイカナゴを取り囲むようにして行動します。
追い込まれたイカナゴの群れは海中(海底)にもぐります。すると、海底にひそんでいるタイやスズキもイカナゴを追いかけて水面に移動して来ます。
これを狙って一本釣りで捕る世界でも珍しい伝統漁法で、「鳥付こぎ釣漁業」や「いかり漁」と呼ばれ、江戸時代の元禄あるいは寛永に始まったらしいです。
約300年以上続いた広島のアビ漁も今では過去の話となってしまいました。 限度を越えた大量の海砂採取で海底が荒れ、イカナゴが棲む生態系が破壊されたこと、高速船の運行でアビ類の生息が脅かされたことが、減少の原因と考えられています。 1986年(昭和61年)を最後にアビ漁は途絶え、今では瀬戸内海でアビ類をみることさえまれです。 古文書には万を数えるほどの記録のあるアビ類も、豊浜町では60羽ほどの飛来があるのみといわれています。
アビは、アビ属の5種類の野鳥の総称でもあり、また一つの種でもあります。アビ漁で用いられたのは主としてシロエリオオハムだったといわれています。アビ、シロエリオオハムの他にはオオハム、ハシグロアビ、ハシジロアビなどがアビの仲間です。アビ属5種類はそれぞれ大変よく似ていて、かなり良く観察しないとその区別は容易ではありません。
古名は:かずくとり(潜鳥)、地方名:へいけどり(平家鳥)へいけだおし。瀬戸内海に多数渡来したシロエリオオハム、オオハム。和名はオオハムのハムと同様、潜水して魚を食(は)む「はみ(食み)」が変化したとする説。また、水かきをもつ足より「あしひろ(足広)」または「あしひれ(足鰭)」などから転化したものとも考えられています。
体長はカラスより大きく、冬になるとやってきて、春になるとシベリアなどの繁殖地に帰って行く冬鳥です。
越冬のため渡来してきたアビは、3月ころに換羽(かんう:年に1回羽が抜け換わる) をします。
換羽で一時的に飛べなくなる時期にはアビは外敵から逃げられませんので、安全な場所、そして飛んで行かなくても餌が豊富にある場所が必要になります。
漁師たちはアビ漁の季節になると、アビに恐れられないように手漕ぎ船で近づき、人に慣れさせ、アビが慣れてきたころを待ってから、本格的な漁を初めます。 アビ漁は、漁師とアビとの信頼関係があって初めて存続してきた漁法です。 (1931年昭和6年にアビ漁が行われる海域が「アビ渡来群遊海面」として国の天然記念物に指定され、1964年には広島県の県鳥に指定されています。)
豊島と斎島にかけての海面には、アビ漁(イカリ漁)の漁場である「網代」が集中しており、「アビ渡来群游海面」として昭和6年、国の天然記念物に指定されています。また、それ以来にも明治45年に、狩猟法により、有益な島として、アビは保護鳥に指定され季節を問わず捕獲禁止となり、保護されてきました。しかし斎島周辺の海に飛来するアビは年々減り続け、現在ではアビ漁(イカリ漁)も行うことができない状態が続いています。確かな原因はいまもわかっていませんが、もともと敏感なアビに対して、付近を航行する大型船やエンジン付きのレジャーボートなどが増えてきたこと。瀬戸内海の環境が変わり、餌となるイナゴが減ってしまったことなど様々な原因が考えられます。
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